大阪市で総合区の話が急に蒸し返されている。

大阪市の現行24行政区を8区に再編することを前提とした総合区案が一時取り沙汰されたことがあったが、一度検討の俎上から外れていた。

大阪市会での質疑の際、「自民・くらし」会派の質疑に反論する形で、松井一郎市長が突然総合区の話を持ち出し、8区合区を前提にした条例案を2022年2月にも提出したいなどとする意向を表明した。

「自民・くらし」会派は「8区への行政区合併を前提とした総合区案には反対」と表明し、松井市長は一度矛先を引っ込めた形になった。

しかし2021年12月4日に公明党大阪市議団の土岐恭生幹事長が記者会見の際、「現行の24行政区は多すぎる」として8区合区案も視野に入れた総合区の検討に前向きな意向を示したという経過。

別個の問題点を同時進行させているおかしさ

「総合区制度そのものについての議論」と、現行の大阪市24区行政区を再編する」というのは、本来は全く別の課題である。

にもかかわらず、合区を勝手に前提条件にして総合区を設置するというあり方自体、混乱を招くものとなっている。

さらには住民や地域からの意見聴取の機会などを含めた十分な論議がないまま、異なる論点のものをひとまとめにして、いきなり議会に提出しようというやり方にも疑問を感じる。

行政区の合併・統合は、それ自体が長期の折衝での住民同意を必要とするもの。 現行の大阪市24区の再編自体は、理論的な話でいえば、未来永劫にわたって「ない」とは言い切れない。 しかしながら現時点で、市民から再編を求める声などが出ているわけではない。 また住所の表示や地域コミュニティなど日常生活にも大きな影響が出ることでもあるから、地域での合意を含めたていねいな対応が必要となってくる。行政が案を出してすぐにできるような性格のものではない。

大阪市では1970年代、都心部のドーナツ化と周辺部の宅地化により当時の各区ごとの人口比率がアンバランスになったことで、都心部の区の合区と、周辺部の区の分区の案が取りざたされた。

分区は比較的スムーズに実現したものの、合区については住民からの意見がまとまらず、強い反対の声も出た。過去の区の再編により分区された「福島区・此花区(1943年分区)」「南区・浪速区・天王寺区(1925年分区)」を再び組み合わせる案ですら、強い反対意見が地域から出て、結局は断念することになった。 東区と南区の合区での中央区の設置については、最初に再編案が出てから20年近くの歳月を要した。

そのような過去の事例からも、地域住民との間に慎重な合意を経ていく必要がある。

しかし総合区構想での現行行政区の合併では、住民の要望から出発したものではない、合意形成までの期間が短すぎる、市全域に大きくかかわることであることにもかかわらず、一方的に進めようとしている致命的な点がある。 このことは極めて問題であると言わざるをえない。